雖井蛙流平法夢想秘極之巻


『雖井蛙流平法夢想秘極之巻』筆者蔵

こゝ数日漢文ばかりを読み耽り、いさゝかも更新する閑を得ず、今日やっと一段落を見て更新に掛りました。
今回は雖井蛙流平法の傳書です。
條々はさておき、後の記述に注目したいと思います。

傳書を見慣れている方は殆ど読める筈ですし、あまり目新しいことを書けませんが、あまり読んだことのない方へ向けて書きます。


右之條々愚予累年仰武神信心
右の條々.愚かにも予[自称(深尾角馬)]累年[年を累ねて]武神を仰ぎて信心し.

因旦暮運工案
旦暮[朝も晩も一日中].工案[工夫思案]を運[めぐ]らすに因て、

蒙摩利支尊天瑞験此書記畢
摩利支尊天の瑞験を蒙り.此れを書き記し畢ぬ.
「右之條々」の流れを汲み、「此れを書き記し畢ぬ」という読み筋の方が文脉に適うようです。
はじめは「此書をば記し畢ぬ」と考えていましたが、どうも「右之條々」からの流れに適いません。

雖爾作者依短愚號雖井蛙平法
爾[しか]りと雖も.作者短愚に依て.雖井蛙平法と號す.
<晋書><南史>に「愚短」という語が見られます。自分は愚鈍で無能だと卑下して云う。

不執心之輩全不可相傳者也千金莫傳秘々
執心の輩にあらざれば.全く相傳すべからざるものなり.千金といへども傳ふ莫れ.秘すべし秘すべし.
「千金莫傳秘々」、ありふれた詞のためか、本文においてはざっくりと省略されています。補うと上記のように読めます。