柳生流禮式入目幉


『柳生流禮式入目幉』筆者蔵

前の記事にて、謝礼金は儀礼上のもの云々のこと、すこし触れましたので、この史料を掲げて置きます。但し無邊無極流ではなく柳生流です。
受け取るべき謝礼金の額が列挙されていて、流儀の傳授の度に何程包むのか分ります。
文化年に師から門弟へと傳授されました、この通り急度指南致せよ、と。
考えてみれば、相場の分らぬことには謝礼のときどちらも困ります。
 ※「幉」字は「牒」字と同じです。

さて、史料を開くと「式入目覺」とあります。そして初傳に傳授すると思しき名目が列挙されています。
謝礼金の欄は少々分りづらいのですが、おそらく、金百疋或は銀一両が相場にて、さらに神酒料を納めたようです。
後の方になると、金百疋に加えて銀二両です。

次に「極意の式」とあり、これは中傳に相当するものか、金二百疋或は銀二両、さらに神酒料です。

最後に「大極意式」とあり、これは奥傳に相当するものか、各傳授に應じて謝礼の額はかわります。
たとえば「死活」ならば、金五百疋或は銀二両、さらに神酒料。
「釼」は、金三百疋或は銀三両、さらに神酒料。
「釼陰陽勢」は、金千疋或は銀三両、さらに神酒料。
尤も奥の「免之巻」は、金一両或は南鐐一片、さらに筆料です。

最後のものだけ「筆料」とあり、これは傳書の潤筆料です。初傳や中傳には無く、最後に一括して傳書を傳授したものかと思います。
私は広く謝礼金の相場を知っているわけではありませんが、従来史料に見てきた謝礼金にくらべて高いと思います。
多くの名目を設けてその度に謝礼金をとるため、合算するとかなりの額にのぼるのです。