山本久濤書簡


『山本久濤書簡』筆者蔵

公儀の御旗本山本久濤より送られた目付相傳に関わる書簡です。
これまでに触れたごとく、山本家は鎗術師範の家筋にて、相手の三俣氏は門弟です。
但し、三俣氏は江戸へ出府しておらず、姬路で小林加源太に師事していました。つまり、小林氏が三俣氏の技倆を認め、山本氏に取り次いでいたのです。


一筆啓上致し候.甚寒の節弥御安全に御勤め成され珍重に存し奉り候.
これは定型詞です。寒いけれども元氣に働いているようで何よりです、と。

然は此度目付相傳致し候に付.
目付は無邊無極流相傳の位を言い、初傳に相当します。

則ち目録巻物壱巻進上致し候.御落手成さるへく候.
目付を相傳したので、目録巻物を送ります、と。

且又右御礼として御肴代金百疋御意掛けられ忝く存し奉り候.
先に金百疋(金一分)を傳授の御礼として受け取っていたようです。なお、謝礼金は儀礼上のものですから、相場はほゞ決っていたと思われます。

右御意を得度斯くの如く御座候.恐惶謹言.
「御意を得度」は、今の言葉でいうと何が適切でしょうか。こんな次第ですよ、ぐらいの意味かと思います。

閏十一月廿八日.山本嘉兵衛久濤.
目録巻物は現存していて、文化十年のこと。山本氏は公儀の御旗本にして鎗術師範。

三俣惣之進様人々御中へ参らす.
當時の三俣惣之進は義武。この人は義行の子です。